住宅ローンは、現時点ではまだ法的な異性間での婚約が前提とされ、私たちLGBTにとっては制約があるのが現状です。
けれども、徐々に整備がされ始め、この数年で選択肢は増えていますので、その中でもメリットのある方法を十分に検討したいですよね。
今回は、LGBTカップルにとって可能なローンの組み方と、その特徴をお伝えします。LGBT住宅ローン対応の金融機関もまとめてますので、ご参考にしてください。
住宅ローンって何?という基本編はこちらから。
目次
LGBTカップルにとっての住宅購入の壁
まず、そもそも一般的な夫婦と比べてどんな制約があるの?というところを挙げてみます。
ネック①収入合算、ペアローンが組めないケースが多い
これがきっと私たちLGBTにとっての最大のネックです。
一般的な夫婦や親子の場合、夫などの1人の収入で借り入れ額を決める方法に加え、借り入れ額を増やすために2人の収入を合わせる「収入合算」、「ペアローン」という組み方が可能です。
法的な婚姻関係にないLGBTカップルでは、「収入合算」「ペアローン」の利用ができない場合が多いんです。
収入合算とは:
住宅ローンを申し込む本人の年収に、配偶者や親子の2人の収入を合算してローンを借りる方法。収入合算をすると借り入れ額が増加します。
あくまでも住宅ローンを借り入れるのは名義人だけで、もう一方の人は連帯保証(または連帯債務)の形をとります。※
※民間の金融機関は大半は、名義人が返済できなかった時にもう片方が債務を負う「連帯保証」です。
フラット35や一部の民間の金融機関でのみ、名義人の返済能力にかかわらず、もう片方も債務を負う「連帯債務」を取り扱っています。
ペアローンとは:
それぞれの名義で住宅ローンを借り入れ、返済していく方法。
それぞれのローンに対してそれぞれが返済義務を負い、お互いにローンの連帯保証人になります。
後述しますが、一定の条件をクリアすればLGBTカップルでも収入合算、ペアローンを組める金融機関が増えてきましたので、上手に使っていけたら選択肢がかなり広がると思います!
とはいえ、まだまだ限定的であるというのが、ネックの一つということです。
ネック②万が一の時、相続できないケースがある
万が一、住宅ローンの名義人が亡くなってしまった場合、団信(団体信用保険)で住宅ローンが代わりに返済されますが、家の所有権が残されたパートナーに相続できないケースがあります。
つまり、LGBTカップルは法的な効力が無いので、遺言書を準備していない限り、家の所有権は親族に相続されるということです。
ネック③関係解消の場合、財産分与の制度が適用されない
一般的な夫婦の場合、離婚時には「婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配する」財産分与という制度があるようです。
法律にも、離婚の際には、相手方に対し財産の分与を請求することができる(民法768条1項)と定めています。
一方で同性カップルにはその権利が適用されませんので、個人間の話し合いなどで取り決め、解決していく必要があります。
あまりいい話ではないので気は引けますが、別れることになった場合に、負担していた住宅ローン分をどう考えるか、家はどう扱うのか、といった決まり事を考えておくことが必要そうです。
LGBT対応型ローンとは?
LGBT対応型のローンは、2017年にみずほ銀行が国内初として取り扱いを開始してから、少しずつ増えてきました。
LGBT対応型のローンとはどういう意味なのかというと、現時点ではいずれの金融機関も「LGBTカップルでも一定の条件をクリアすれば、一般的な夫婦同様の扱いでローンを組める」としています。
条件の具体例として、たとえば多くの銀行が以下の証明書の提出を掲げています。
「渋谷区が発行するパートナーシップ証明書」もしくは、「任意後見契約および合意契約に係る公正証書、任意後見契約に係る登記事項証明書」を提出する
一部、たとえば楽天銀行は「スーモカウンター限定、新築物件のみ」であれば、証明書不要といった条件になっています。
LGBT対応の住宅ローン、取り扱い金融機関
LGBT対応型の住宅ローンは、メガバンク、ネット銀行、地銀のそれぞれで取り扱いがあります。それぞれ特徴をまとめてみます。
金融機関 | 内容 | 条件 |
みずほ銀行 | 家族ペア返済や収入合算に同性パートナーを適用 | aかbいずれか: a) 東京都渋谷区のパートナー証明書の提出 b)任意後見契約および合意契約に係る公正証書の正本または謄本、および任意後見契約に係る登記事項証明書の提出 |
住信SBIネット銀行 | ペアローン、収入合算、担保提供における配偶者の定義に同性パートナーを適用 | 合意契約に係る公正証書および任意後見契約の謄本、任意後見契約に係る登記事項証明の提出 |
ソニー銀行 | ペアローン、担保提供における配偶者の定義に同性パートナーを適用 |
aかbいずれか:
a) 東京都渋谷区のパートナー証明書の提出 b)任意後見契約および合意契約に係る公正証書の正本または謄本、および任意後見契約に係る登記事項証明書の提出 |
楽天銀行(金利選択型) | 収入合算を同性パートナーに適用 | スーモカウンター新築マンションでの窓口申し込み、連生型団体信用生命保険の加入 |
三井住友信託銀行 | ペアローン、収入合算、担保提供における配偶者の定義に同性パートナーを適用 |
aかbいずれか:
a) 東京都渋谷区のパートナー証明書の提出 b)任意後見契約および合意契約に係る公正証書の正本または謄本、および任意後見契約に係る登記事項証明書の提出 |
大垣共立銀行 | 連帯債務者・連帯保証人(収入合算・担保提供)の対象に同性パートナーにも適用 | 自治体(市・町等)が発行する「パートナーシップ宣誓書受領証」等公的証明書の提出 |
滋賀銀行 | 連帯保証における配偶者の定義に同性パートナーを適用 | 連帯保証における配偶者の定義に同性パートナーを適用 |
琉球銀行 | ペアローン、収入合算、を同性パートナーにも適用 | 那覇市のパートナーシップ登録証明書の提出 |
沖縄銀行 | 収入合算者(連帯債務者、連帯保証人)の定義に同性パートナーを適用 | 本人確認書類および住民票での同居の確認 |
2019年1月30日から適用を開始した沖縄銀行は、なんとパートナーシップの公的証明書不要でした。現時点では全国初かと。よりハードルが低くなることは嬉しいですね!
LGBTカップルの住宅ローンの組み方
では、LGBTカップルにとってどんな住宅ローンの組み方があるのか、まとめてみます。基本はこの3つのいずれかになると思います。
1)1人でローンを組む(1人名義)
2017年以前はこの「1人でローンを組む」一択でした。多くは片方がローンを組み、もう片方が返済の一部を負担する方法になるでしょうか。
片方のパートナーが、アルバイトやパートなどの住宅ローン審査が通りにくい場合は、もう片方の正社員などの人が1人でローンを組む(組まざるを得ない)ケースもあると思います。
一方でデメリットとしては、名義人1人の稼ぎ力で借り入れ額が決まるので、選択肢は他に比べて狭まってしまいます。
メリット |
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デメリット |
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1人で余裕でローンを組める場合などはこの選択肢になると思いますが、収入合算や2人でローンが組める状態にあるのであれば、そちらも検討してもいいかもしれません。
2)1人でローンを組む(1人名義)/収入合算
収入合算をすると借り入れ額が増加します。ペアローンと違う点としては、「家を名義人1人で所有すること」になりますね。
もし名義人に万が一のことがあれば、その時点で残されたパートナーは、団信によって住宅ローンの返済をしなくて済むこととなります。(ただし、家の所有権については遺言書の準備が必要)
逆に、名義人ではないパートナーに万が一のことがあると、団信は適用されずに名義人が1人で引き続きローン返済をしていくこととなります。
また、1人名義なので住宅ローン控除※は、もちろん名義人のみの適用となりますね。
あとは、パートナーシップ関係を証明する公的書類の提出が必要です。これはペアローンも同じです。
メリット |
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デメリット |
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収入合算は、リスクが高いわりにメリットが少ないな、という印象です。
※住宅ローン控除とは:
家を住宅ローンで購入した場合において、一定の割合に相当する金額が所得税から控除される制度のこと。10年もの間、年末ローン残高の1%が所得税から控除され、確定申告で戻ってくる。
■新築・中古共通の条件
①年間の所帯合計所得が3000万円以下であること
②住宅ローンの返済期間が10年以上であること
③建物の床面積が50平方メートル以上であること
④住宅ローンの借主が居住すること
■中古住宅の場合
①木造の場合は築20年以内、鉄筋コンクリートなどの耐火建築物は築25年以内であること
②リフォームの場合リフォーム費用が100万円以上であること
3)2人で組む(2人名義)/ペアローン
借り入れ額が増加することは収入合算と同じですが、「2人で家を所有すること、それぞれが別のローンを組むこと」が異なる点です。
2人で家を所有
持ち分をあらかじめ決められるので、あとあと揉めるリスクは低減できます。
別々のローンを組む
別々に好きなローン商品を選べるので、金利タイプ、返済期間などをそれぞれで選べます。
また、1ローンに対して1団信ですので、2人それぞれが団信に加入することとなります。万が一のことが片方にあった場合、必ず半分は返済が免除されることとなります。
住宅ローン控除についても、1ローンに対して適用されるので、2人分の節税効果が得られることなります。
一方で、1つの家に対して2つのローンを組むことになるので、手数料は2倍かかってしまいます。
メリット |
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デメリット |
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メリットもデメリットも多いのですが、所有権と団信についてのメリットが大きいので、管理人ハリコたちはペアローンを選びました。
共働きで、かつ2人とも団信に加入できるなら、ペアローンがメリットが大きいと思います。
もし余裕を持たせるために、2人の収入でローンの借り上げ額を上げたい、といった要望がある場合は、以下の順番に検討すると良いかもしれません。
「ペアローン」→「収入合算」→「1人で組む」
公正証書提出の注意点
地方銀行や新築マンションを対象とした楽天銀行を除き、収入合算やペアローンを組む際は必ず公的証明書が必要です。
管理人ハリコたちは、仮審査含めると2社にペアローンで組む話をしたところ、まだ事例が少ないようで、不動産担当ばかりか銀行担当者も正しい情報を把握していないケースが見受けられました。
たとえば、
とか、
などなど。
このような案内があった場合は、再度確認した方がいいです。基本は金融機関の公式Webサイトに載っているのが正しい情報ですので、ご注意ください。
公正証書が必要なタイミング
「住宅ローン本審査の申し込み時」に公正証書の提出が必要です。仮審査時には不要です。
不動産探しは早い者勝ちなところがあるので、住宅ローン本審査申し込み時には書類が提出できるように、あらかじめ用意しておくとスムーズです。
家購入までの全体の流れはこちらの記事に書いています。
まとめ
同性パートナーでも組めるローンの種類として、まとめはこのようになります。
・一部の金融機関では証明書提出で、一般の夫婦同様の扱いでローンを組める
・メリットの順序は「ペアローン」>「収入合算」>「1人で組む」
・公正証書関連は、金融機関公式サイトの情報を参照
・公正証書は前もって準備する
この次は公正証書の取得についてまとめていきたいと思います。
これまでの家購入編はこちらです。