街中の貼り紙や看板、会社内の書類で「ちょっと待って、なんでそのフォント使うの?」って思うことないですか?私はあります。
特に気になるのが、ダサいと言われる「創英角ポップ体」。これ、本当によく見かけるんですよね。
イケてないとは思いつつ、この令和時代になってもなくならない。それがなぜなのか、ちょっと考えてみました。
ちなみに私は非デザイナーではありますが、以前デザインに関してほんの少しかじった程度に勉強し、普段はフォント含めたデザインにも関わりのある職業人、という微妙な立場で推測を展開してきます。
目次
創英角ポップ体とは?
はい、このようなフォントのことです。
ちょっと前までは、Microsoft Officeが標準搭載された全てのWindowsに入っていました。でも私のWindows10には入っていなかったので、もはや淘汰されつつあるのかも…
なので、ほんの数年前までは何か手作りでポスターやチラシを作ろうと思った人が、Windows PCがあればこのフォントを使えていたということです。
けっこう町中でもあふれているので、皆さんも必ず見たことがあると思います。(意識したことはないかもしれませんが)
ちなみに、以下からフォントがダウンロードできますので、PCに入っていなくて使いたい人はこちらから。
そもそもポップ体って何?
ポップは「POP(Point of Purchase)」のことで、商店で使う看板や広告に使う文字です。J-POPなど、ポピュラーという意味のポップではないようですね。
フォントはいたるところで使われている
町中でもけっこう目にします。
たとえば、こんなところ。
置き換えてみる
今あるものをこの創英角ポップ体で表現してみたらどうなるのか。勝手ながらちょっとやってみました。
元の画像はこちら。眼鏡市場
この眼鏡市場のバナーをポップ体にしてみると…
フォントでだいぶ印象変わりますよね。。
大飯原発
なかでも私が過去にざわついた写真をご紹介します。
※画像引用:産経【大飯差し止め命令】大飯原発、再稼働認めず 事故後初 (1)
この画像引用元は産経のニュースサイトですし、他のメディアサイトにも同じ写真の掲載があります。なので、これは訴訟判決の実際の写真で、架空に作ったものやコラ(コラージュ)ではないんです。
なぜこのフォントを選んだ?っていう、私の中での伝説的な事例でした。
どこがフォントを作ったのか
ややマニアックですが、フォント名にある「創英企画」が気になり、このフォントが作られた経緯を少し探ってみました。
現在は、リコーインタストリアルソリューションズが販売していますが、もともとは「株式会社 創英企画」がつくったものとのこと。だから創英角ポップ体という名称なんですね。
でもこの会社は2016年にリコーに譲渡され、消滅してしまったようです。
リコーインダストリアルソリューションズ株式会社「創英書体の字母権利取得により、フォントのラインナップ強化へ」
なぜイケてないポップ体を使ってしまうのか?
もともとはPOP広告用に作られたフォントとのことですが、なぜ人々はその広告以外の場所や用途でポップ体を使うのか。私の勝手な推測を挙げてみます。
1. 非デザイナーがWord、Excel、Power Pointで内製で作ったから
まずはこれが大前提かと。デザイナーさんならフォントに対する意識が高く、ポップ体以外の適したフォントを使うと思います。
つまり言い換えると、フォントに対する意識がそんなに高くない(=デザイン的な造詣が深くない)素人といえる人が作っているから、ということではないかと思います。
かつ、Windows PCにデフォルトで入っている(かつて入っていた)、限られたフォントから選んでいる、という状況もありますね。
2. 目立たせたい
このフォントは文字が太いので、これを使えば目立つだろうという考えです。確かによくみると一般的なゴシック太字の2倍くらいの太さがあるかも。
町中で見かけるこの創英角ポップ体フォントを選択する側の意識としては、「見てほしいからとにかく目立たせたい!」という意図が一番強いのではないかと思います。
3. カジュアルさを出したい
「これは形式張ったお固いものではありませんよ。だから気軽に見てね」というような、身近さ・カジュアルさをアピールしたい意図もあるように感じます。
そうでなければ、シンプルにゴシック体などの選択肢もありますからね。
4. 工夫した感を出したい
制作会社に作成をお願いせずに自身で何かチラシや回覧物を作るとなった時、私含めて非デザイナーの作り手がよくやることって、以下のようなことかと思うんですよね。
- イラストを加える
- 文字色を変える
- フォントを変える
でもデザインの観点では②、③は特に注意必要ですよね。場合によってはダサくなってしまうと思います。(ただ問題はダサくなった、と気づかないケースが大半という気がする…)
5. よく見かける
よくも悪くも、昔からMicrosoftにデフォルトで入っていたので、いたる所にこのフォントが溢れています。それを日常的に目にしている私たちなので、違和感を感じない人が使ってしまう、というのも要因としてありそうです。
官公庁、交通機関に多い
町中で見かけるこのポップ体、もう一つ気づいたのは官公庁や交通機関に多いな、ということ。
これらの機関は、そもそも「お知らせ、お願いごと、通知」が多く、掲示物や看板にする必要があるモノゴトが多いのが特徴かと思います。
加えて「それらを内製化していること」が理由なんでしょうね。(明らかに外注しないでWordとかで作っていそうなものが多いです。)
特に駅で多いのは、情報が多い駅の構内でも目を引くように、という理由がありそうです。創英角ポップ体の成り立ちは「たくさんのモノを売る量販店で、目立つように作られた」ということなので。
そういう意味では、駅のような場所で使用されるポップ体は、ある意味使われるフォントとしては適しているともいえそうですね。(たとえダサくても。)
そういえばあのお店でも…
忘れてはいけない、愛すべきポップ体を使ったこのお店がありました。
まいばすけっと!
引っ越してこのお店を初めて見かけた時、衝撃受けました。ポップ体や!!
よく見ると、入り口のドアの店名や営業時間のフォントもポップ体です。
でもこれはPOPだから適していますね。まいばす、このおかけであか抜けない印象なんだけど、そこも含めて私は好き。
まとめ
ポップ体そのものがイケてないという訳ではなく、それを使うべき対象が間違っているので違和感を覚える、またはイケてないと思ってしまうのかもしれません。
POPって安さや親しみやすさをアピールするものなので、そういうものにふさわしくない場所でポップ体が使われてしまうと、チープ、ダサい、と思われてしまうと言えそうです。
特にフォントやデザインに携わった人たちは、何だこりゃ、と感じているのではないかと思います。
一方で、ポップ体は駅などでは目を引くフォントであることは事実なので、「注意喚起したい」という目的に対して効果的なことは間違いないですね。(一応、擁護してみる)
TPOにあったフォントを選ぶことで効果的に内容を表現する、というのが一番大事なんだな、と改めて感じました。
なんだかんだ私のお気に入りのポップ体、廃れないでほしいと願ってます。